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2004.05.13

ジャガイモの花が満開

近くの畑に、薄紫色の花がたくさん咲いている。

この花を見ると、近所にいた、あるおばさんのことを思い出す。
彼女はちょうど私の母くらいの歳の人で、でも、一見もっと年を取っているように見えた。その人は、昔、転んだことが原因で脳に障害を持つようになってしまったらしい。子どものような無邪気さで、行き会う私に声をかけてくれた。時には職場(職住近接環境なのです)にも遊びに来た。

まだ、彼女がどこの誰なのかも知らなかった頃、職場に来た彼女は「かわいいから飾っておきなよ」と言ってジャガイモの花をくれた。恥ずかしながらジャガイモの花を知らなかった私は、その花の可憐さに驚いた。

それから1年半くらいの間、私や職場の人と、彼女とのささやかな交流は続いた。家にいてもすることがない彼女は、よく近所を散歩し、道で会えば立ち話をして、職場に来てはお菓子をねだって帰った。
しかし、まだ50代だった彼女の夫が肝臓の病気で逝ってしまってから、彼女はぱったりと姿を見せなくなった。葬儀など一連のゴタゴタの最中に、とても彼女の面倒まで見ていられないと、年老いた義母が彼女を入院させたのだった。
彼女には、私と同い年だという息子を筆頭に、子どももいたが、誰一人彼女を引き取りには来なかった。
1年ほどして、義母も逝ってしまった。

今、その家には誰もいない。彼女の消息も、人づてに聞くだけだ。
どこかで、元気にしていて欲しい。少し悲しい気分で、そう祈ることしか私には出来ない。

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